論文題目:
集団移動シミュレーションにおける移動障害物の回避に関する研究
概要:
近年、コンピューターの性能向上により、ゲームなどにおいて、多数のオブジェクトを同
時に扱うことが可能になった。しかし、仮想空間上で多数のオブジェクトを配置して扱うと
いった場合に、ユーザーが一つ一つ操作するのは煩雑である。オブジェクトが集団として自
動的に接触や衝突を回避し、スムーズに目的地まで移動してくれる手法があれば、そういっ
た操作を軽減することができる。
本研究では、汎用的な障害物回避を目指し、集団移動において、移動する障害物を回避し、
目的地まで移動するモデルの実現を目標とするものである。
具体的な手法は次のとおりである。回避方法は従来の経路検索で多く用いられるメッシュ
分割によるものではなく、集団を構成するキャラクターと、障害物との相対的な位置、及び
進行方向から随時判断して回避する方法を採用した。相対的な位置関係は、距離と、キャラ
クターの進行方向と障害物のある方向との角度の2点から判断し、同時に障害物の進行方向
も考慮する。集団制御にはboidモデルを採用した。boidモデルは簡単なルールで集団制御を
行うことができると言う点で優れており、利用例が非常に多い。また、問題の条件を次のよ
うに限定した。集団を構成する個体は全て同じ大きさとした。移動障害物の形状は単純なも
のとし、大きさについては個体とおおよそ近い大きさとした。障害物の移動は等速直線運動
とし、進路転換を行わないものとした。
相対的な位置関係からの移動障害物回避を実装し、機能確認を行った結果、集団同士での
回避はほぼ確実に行われ、ランダムな移動障害物も多くの場合で回避できることが確認でき
た。