論文題目:
2 枚のシャドウマップを基にした、近傍画素検索によるソフトシャドウ表現の研究

概要:
3 次元コンピュータグラフィクス(以下3DCG) において、影は物体の位置関係の理解を 助け、画像に現実感を付与する重要な要素の一つである。リアルタイム3DCG アプリケー ションにおいて、影の生成は高負荷な処理を必要とするが、近年ではコンピュータの高性 能化・グラフィックス機能のハードウェア化により、3DCG の表現の幅が大きく広がり、 リアルタイムに影を計算し表現するアプリケーションが見られるようになってきた。しか し、そういったアプリケーションでは、ハードシャドウと呼ばれる輪郭がハッキリとして いる影や、ハードシャドウを画像処理でぼかすことにより、全体的に輪郭のぼやけたソフ トシャドウを表現しているものが殆どであり、現実の影と同じような、光源の大きさや投 射距離に応じて半影と呼ばれる輪郭のぼやけた領域の大きさが変化する影を表現できな い。その為、光源の大きさと投射距離を考慮したソフトシャドウ表現手法の研究が盛んに 行われている。従来の研究において高速な処理で投射距離を考慮したソフトシャドウが表 現できる代表的な方法はParker らによるSingleSample 法と、NAMCO によるブラー式ソ フトシャドウ法である。SingleSample 法は、1 枚のシャドウマップのみを利用し半影を表 現する為、高速に処理が可能である。しかし、物体と光源の位置関係によっては正しく影 を生成できない問題や、大きな半影を生成するのが困難であるという問題がある。ブラー 式ソフトシャドウ法では、半影領域の大きさに関わらず、高速かつ計算量が変わらない利 点があるが、半影領域のグラデーションにキザキザのムラが出てしまう問題がある。本研 究ではブラー式ソフトシャドウ法の考え方に基づき半影領域を抽出し、半影領域から本影 と影でない領域を検索し、領域までの距離から色を計算し描画する手法をとる事で半影の グラデーションが綺麗であり、見た目において違和感のない影、そして、高速に処理が可 能である、光源の大きさと投射距離を考慮したソフトシャドウの表現手法を提案する。

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