論文題目:
リアルタイム3DCG における密集した魚群の遊泳表現に関する研究

概要:
近年CG の映像表現技術の進歩によりコンピュータ上で簡単にCG アニメーションを制 作することが出来るようになった。その中には群れのように多くの物体の動きを取り入れ たものもある。しかし多くの物体の動きを表現する場合、物体の制御を制作者の手によっ て設定するのは非常に困難な作業である。そのためコンピュータ上で効率よく群れの動き を表現するためには、群れの移動の自動的な制御が必要である。 これを実現する手法としてReynolds が考案したboid モデルがある。このモデルは3 つ の簡単なルールによって群れを形成することが出来るアルゴリズムである。現在では鳥や 魚などの様々な群れの動きを表現する手法の1つとして多くの制作者がこのboid モデル を利用している。しかしboid モデルには様々な群れの動きを表現するための汎用性があ るが、群れの種類を限定したり、より本物に近い群れの動きを表現するためにはboid モ デルを用いただけでは表現することが難しい。そのような群れの動きを表現するために boid モデルを拡張・改善する研究が行われている。 魚の群れの動きを表現する研究の多くは、boid モデルに各々の提案した手法を加える ことで魚の群れの動きを表現している。またこれらの研究の多くは一箇所に留まらずに遊 泳する群れの動きを表現しているものが多い。一方魚の群れの中でもマイワシのような小 魚の群れは一定のエリアに留まり遊泳することがある。既存研究ではこのような群れの動 きを表現する手法が提案されていない。そこで本研究ではマイワシの群れように一定のエ リアに留まったり、一箇所に留まらずに遊泳する群れの動きを表現する。 この群れの動きを表現するために本研究ではboid モデルのルールを拡張し、表現する 群れの種類によって切り替えた。拡張したルールには個々の魚を群れの内側へ引き寄せる ための引力、個々の魚を群れの外側へ押し出すための斥力、群れの内側と外側で個々の魚 の移動速度を変化させる速度制御のルールを拡張した。この拡張したルールは3 次元空間 内に用意した仮想的な力点を元に個々の魚に与えた。 以上の拡張したルールを用いることで本研究の目的である一定のエリアに留まる遊泳 する群れの動きと従来表現されていた一箇所に留まらずに遊泳する群れの動きを表現す ることが出来た。

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