論文題目:
3DCG コンテンツ開発におけるオブジェクトプロファイラに関する研究
概要:
近年、パーソナルコンピュータやゲーム機において、3 次元コンピュータグラフィクス
(以下3DCG) を利用した数多くのゲームコンテンツが開発されており、その開発環境の
整備が重要な課題となっている。
3DCG では表示する対象、内容をオブジェクト単位で管理し、複数のオブジェクトを
制御する必要がある。表示する形状、色、位置といったオブジェクトの表示機能そのもの
については、既存のライブラリによって構造化が進められ、扱いは比較的容易になってい
る。一方、変形や移動のようなオブジェクトの挙動については、個々のオブジェクトに対
する逐次的な命令の発行で個別に制御されており、情報として管理し、構造化する手段は
これまであまり考慮されてこなかった。よって、複数のオブジェクトが非同期的に挙動し
た場合、状況把握が困難なものになってしまい、望ましい挙動を得るために、非常に効率
の悪い試行錯誤を余儀なくされている。
本研究では、既存の3DCG 用クラスライブラリを用いて作成したプログラムの挙動を、
オブジェクトへの操作履歴を取得し、管理することで、個々のオブジェクトの状態を巻き
戻したり、条件を変化させて再生するなどの制御を可能にする機能を提案する。この機能
をオブジェクトプロファイラと呼ぶ。オブジェクトプロファイラ機能を用いることで、ラ
イブラリのユーザが作成したプログラムの挙動を容易に分析することができ、望ましい挙
動を得るための試行錯誤や、不具合の原因解析などが容易に実現できる開発環境を提供す
る。本論文では、実際にオブジェクトプロファイラを実装したライブラリを作成し、開発
者に提供することでその有用性を検証した。