論文題目:
ひび割れを考慮した木材の経年変化のシミュレーションに関する研究
概要:
近年のコンピュータ技術の発展にともない、以前のコンピュータの能力では困難とされ
てきた現象・事象をCG(コンピュータグラフィックス)にて表現するための研究が行わ
れており、中でも自然現象の表現については雪や炎の表現や苔や錆びといった付着物の生
成方法などに関する研究が盛んに行われている。
また、そういった自然現象の中で素材の経年変化はよく目にする現象であり、なおかつ
一目で変化の様子を把握できるため空間の時間経過を表現する指標として重要な役割を
果たしている。様々な素材の中でも木材は建築材やインテリアなど、利用分野が非常に多
岐に渡っており優れた科学的性質を有しているために我々に最も近い自然物のひとつであ
る。しかしその構造や性質上の問題から時間経過によって腐敗、虫害、割れなどによりそ
の様子や性質を大きく変化させていく。
本研究では木材の経年変化に焦点を絞り、その経年変化の中でもより顕著にその変化を
確認できる割れという現象を含めた新しい木材の経年変化のモデルを提案する。はじめに
木材の断面に現れる年輪や心材・辺材などの幾何学的パターンを考慮したモデルの作成手
法について述べ、次に割れの生成手法について述べる。最後に検証例によって本研究の独
自性、有用性について述べ、最後に問題点、今後の展望について言及する。